生活環境デザインコースでは、建築学の基礎を総合的に身につけるとともに、室内空間や住環境など、人びとの「身のまわりの空間」に焦点をあてて、生活との関わりからデザインを深く学びます。
また、高齢社会における福祉の視点から、医学や介護学との連携をはかり、障害のある人もない人も、高齢者も若者も、みんなが快適に暮らせる、人にやさしい地域社会の創造をめざします。
魅力的な住宅や身のまわりの空間を構想し実現できるデザイナーを育成します。
福祉施設や住環境の設計技術を学び、福祉空間の体験を通して、人と空間の関わりを学修します。
現場での体験やコミュニケーションを通して、広い視野と人々の暮らしを想像する力を育成します。
設計製図や家具製作を通して、ゼロからアイデアを発案し、自らの手で形にするスキルを修得します。
一級建築士の資格取得をめざすカリキュラムを用意。大学で単位を修得し、卒業後直ちに受験可能です。
生活と住まい
自分が生活する身のまわりの空間について丁寧に観察したり、著名な住宅を見学することで、専門的な視点から生活と住まいについての理解を深めます。
環境共生の設計
幅広い視野から環境を見つめ、人と人、人と資源などのつながりを建築として提案。具体的な地域を設定して課題を進め、対象地域の方に成果報告をします。
ケア空間体験実習
生活上支援の必要な人の生活空間に身をおき、その人の思いや生活を、その人の立場で理解する態度を養います。
生活空間の設計Ⅱ
具体的な空間を対象として、そこを魅力的な場所にするためのデザインを考え、自分たちで内装や家具・什器を実際に製作します。
3年 牧野 なな子 さん(静岡県立浜松工業高等学校出身)
※学年は2020年3月時点のものです。
「彩の国連携力育成プロジェクト」は、日本工大で建築を学ぶひとつの魅力だと思います。大学や専門の異なる学生がひとつのチームになり、課題解決に取り組むのですが、このプロジェクトは、自分の視野を大きく広げてくれました。
私は、医療や看護を専門とする学生と同じチームになり、在宅介護が必要な方の暮らしを豊かにする改善案を考えました。実際にチームで在宅介護のお宅を訪問して、ご本人やご家族からお話を伺い、それを元にメンバーでアイデアを出し合います。医療が専門の学生は医療の目線で、建築が専門の私は生活デザインの視点で、それぞれに異なった意見を出し合いました。
“要介護者が家で生活したいという要望をどのように叶えるか”というテーマで議論したときのこと。私は介護者の方の動線を見直し、レイアウトの変更を提案したのですが、医療が専門の学生は、介護者の負担を考慮し、デイケアを利用しながら介護生活を送るアイデアを提案。同じ課題でも専門によって見方が異なることに改めて気づき、建築以外の専門領域の人と関わる大切さを知りました。また実際に在宅介護のお宅を訪問してお話を伺う機会が持てたことも良い経験でした。
今後は設計の研究室に進もうと考えていますが、この活動で学んだ人の生活に寄り添う視点を忘れず、さらに専門的な知識や技術を身につけていきたいと思います。
空間デザイン研究室
足立 真 教授 [博士(工学)]
仕上材料・人間工学研究室
工藤 瑠美 准教授 [博士(工学)]
建築光環境研究室
伊藤 大輔 准教授 [博士(工学)]
福祉住環境計画研究室
野口 祐子 教授 [博士(工学)]
民俗文化研究室
板橋 春夫 教授 [博士(文学)]
建築歴史・構法研究室
黒津 髙行 教授 [工学博士]
福祉空間計画研究室
勝木 祐仁 准教授 [博士(工学)]
環境共生・建築設備研究室
樋口 佳樹 准教授 [博士(工学)]
「まちをアルバムにする」の取り組みで提供された写真の1枚
建築は竣工した時がひとつのゴールと言えますが、そこからがスタートという捉え方も大切です。人が使いはじめてこそ意味を持ち、いきいきとした時間が流れ始めるからです。竣工後の豊かな暮らしをめざした環境の構築が重要です。
ところが、20世紀の建築や都市は必ずしも、人の暮らしを重んじたものではありませんでした。住む場所と働く場所が分かれ、交通システムが整備され、経済活動優先の都市ができていきました。医療・福祉施設も、20世紀に建てられたものは、看護・介護を効率化する、患者や利用者を管理するという発想が強く、人に寄り添ったデザインになっていませんでした。
こうした建築や都市のあり方に問題意識を持ち、住環境の形成過程や、生活環境のリデザインの研究に取り組んでいるのが私の研究室です。暮らしの豊かさを育む生活環境とはどのようなものか。当たり前のように感じている日常の環境が、どのような過程で形成されてきたか、時には批評的に解き明かしながら、生活環境の再構築に必要な視点や手法を探求しています。
そのひとつとして、「まちをアルバムにする」という、地域の歴史を生活目線で紐解く活動を、地域の方々と協働で進めています。昔の写真を集め、学生がお話しを伺い、キャプションをつけて写真展を開催します。写真展では地域の方々が、懐かしそうに語らう姿がみられます。地域の歴史といえば、“〇〇小学校が建設された”“〇〇台風で被害を受けた”など、大きな出来事や事件を中心に語られることが多いのですが、一連の取り組みでは、地域の方々が対話の中から、住む人の目線で地域の歴史を浮かびあがらせます。そこには、生活環境の再構築について考えるヒントがあると考えています。
このように私の研究室では、生活を丁寧に見る姿勢を重視し、日々の暮らしが生活の環境をつくり、その環境が暮らしを育むという関係に注目しています。そこに生きる人たちが生活の環境をつくる主体であると認識した時、建築の専門家は、そこにどう関わるべきか。学生に思索の機会を与えつつ、ともに考えていきたいと思っています。
学生たちは将来、建築の仕事につくと、どうしても「建物」をつくる意識が強くなります。それは建築の視点としては必要ですが、学生のうちに、人の暮らしにたくさん触れ、生活目線を鍛えてほしいと考えています。
福祉空間計画研究室
勝木 祐仁 准教授
※2020年3月時点の情報です。
将来の進路
大学院進学/建築設計者(住宅・店舗・福祉施設設計など)/まちづくりコンサルタント/住宅リフォームアドバイザー/インテリアデザイナー/家具制作者/住宅設備機器の製品開発者/施工管理者/教員・公務員
めざす資格(分野共通)
一級建築士(指定科目の単位を修得し、卒業後直ちに受験可能)、二級建築士・木造建築士(指定科目の単位を修得し、卒業後直ちに受験可能)、1級建築施工管理技士(卒業後3年以上の実務を経て受験可能)、1級インテリア設計士(卒業後1年以上の実務を経て受験可能)、インテリアプランナー(在学中に受験可能)、インテリアコーディネーター(在学中に受験可能)、2級福祉住環境コーディネーター(在学中に受験可能)、マンションリフォームマネジャー(在学中に受験可能)、高等学校教諭一種免許(工業)、中学校教諭一種免許(技術・数学)
生活空間実験演習室
インテリア実習室
学生制作のラウンジ
日本工業大学は、文部科学省による共同教育推進事業の採択を受けた「彩の国連携力育成プロジェクト」に参加しています。このプロジェクトに参加しているのは、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・建築設計士など人の暮らしを支える専門職を養成している埼玉県内の4大学(代表校:埼玉県立大学、連携校:埼玉医科大学・城西大学・日本工業大学)。少子高齢化や医療・福祉に関するニーズの多様化に対応するため、4大学の学生が共同の実習などに取り組んでいます。ここでは専門的な知識・技術に加え、他の専門職と連携し、チームで課題を解決する力を身につけます。本学からは、生活環境デザインコースの学生が中心となって参加しています。