2019年末から私たちの社会を席巻した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。感染症によって身体の健康を損なうだけではなく、私たちの生活のあり方もさまざまな制約を受けることになりました。経済活動も停滞を余儀なくされています。コロナウイルスは、今後終息していくかもしれません。しかし、地球温暖化によってシベリアや北極の凍土が急速に溶け、そこから未知のウイルスが放出される危険性も高まっています。交通ネットワークが進化した今、それらのウイルスが世界中に広がる危険性もあるのです。
多くの人が今、コロナ禍の中でSNSを通して、その辛さや大変さを記事にしています。こうしたSNSの記事を追跡、その中から正しいと思われる情報をピックアップして、人々の感情分析に役立てる試みを研究テーマとしています。テキストマイニングという手法を用い、出現の頻度や出現の傾向、その時系列などを解析し、人々の感情がどのように変化していっているかを見いだします。しかしSNS上の膨大なデータには正しいものやフェイクなものなどが混ざっています。それを見分けるのは、やはり人間の判断力です。この研究を通じて、僕たちは「まとめる力」と「伝える力」を身につけました。これからどんどんAIは進化して、僕たちの生活の中に普及してくるはずです。しかし人間にしかできない力は今後とも僕たちの価値になると思います。
辻村先生の研究室では、これからますます本格化すると考えられるAIの時代に向けて、さらに重視される「想像力・発想力」を鍛えることに力を入れています。とくに「計算知能化」に関する研究は、技術としての歴史も浅く、いまだ発展途上にあります。そのため、研究の多くの部分は「直感」や「想像力・発想力」に大きく依存しています。また、新しいものに積極的にチャレンジして行く、開拓精神も必要不可欠です。また、埼玉県南埼玉郡の宮代町における高齢者向けSNS講座を毎月開催し、宮代町に暮らす高齢者の方々の情報スキルを向上させる取組みを行っています。
わが国では、高度成長期に整備されたさまざまなインフラの老朽化が急速に進んでいます。さらに今後、新たに整備を必要とするインフラは加速度的に増していくことが予測されています。なかでもトンネル事故は、その被害の大きさ、救援の難しさからとりわけ対策が注目されています。2015年のデータですが、全国の高速道路のトンネル数は1,021カ所、全国のトンネル数の約10%です。全国で発生したトンネルでの死亡事故のうち、実に36%が高速道路のトンネルで起きています。もちろんその原点のすべてが老朽化というわけではありませんが、少しでもトンネル事故を減らす方策として点検強化、修繕対策などが求められています。
AIを用いて、トンネルの展開図からひび割れを検出し、トンネルの事故を未然に防ぐための研究をしています。モバイルマッピングシステム(MMS)で、移動しながら周囲の環境を3次元で計測するシステムを活用し、ひび割れを抽出するのですが、作業そのものは地道で淡々と続き、根気がいる作業です。しかし、この作業が功を奏して、トンネルの画像からやっとひび割れだけを検出できたときは、全身が震えるほどの感動を覚えました。作業開始から4カ月程度たっていたでしょうか。この感動は、同時にこのシステムがトンネルひび割れの早期発見や修繕工事の効率化に貢献できるという確信から生まれたものだと思います。
石川先生の研究室では、GPSやカメラなど、さまざまなセンサを活用し、移動しながら周囲の環境を3次元で計測するモバイルマッピングシステム(MMS)の研究に取り組んでいます。時速80kmで走行していてもしっかりと計測が可能で、測量にも使えます。MMSで測ることができる点群データは1秒間で10万点超。この膨大なビッグデータはAIなどにより自在に活用ができ、将来的にはマップデータの更新やインフラ整備、自動運転、もちろん土木や測量にも応用できる。となれば、今最先端の科学技術とのコラボレーションで、社会を変革するさまざまなテクノロジーに挑戦できることも魅力です。
大きな災害が起きると、電波を発信する基地局などが損害を受け、通信インフラが途絶えてしまうことがあります。このため、現地の様子がわからない、あるいは被災者が遠方の縁者に連絡を取ることができなくなるといった事態が発生します。この事態は救助隊の派遣にも影響を及ぼします。電波は障害物に遮られることがあり、基地局から遠くなると電波も弱くなります。また街中にはビルの壁、線路や道路の高架など、さまざまな障害物があります。このため、ひとつの解決方法として建物などの影響を受けにくい「空中」に基地局をつくる、といった方法が考えられています。
平栗先生の研究室では、5G、さらにその先にくるとされる6Gなどの通信方式について研究しています。たとえば現在では基地局を設置する都合上、地上の平面にしかネットワークは構築できませんが、ドローン編隊飛行を中継局として、空中に3次元の超高速無線ネットワークを構築することが可能になります。これなら、災害現場の様子を映像で送って確認したり、被災者の通信インフラとして活用できます。僕は、今、実空間、屋内・屋外などにおける5G、4G、Wi-Fiなどの通信方式の通信品質を調査研究しています。それぞれのメリットやデメリットを明確に把握し、その活用方法を考えます。この研究の面白さにハマって、このまま研究を続けるため大学院へ進む決意をしました。自分の研究目標の、さらにその先を見てみたいんです。
平栗先生の研究室では最先端の基礎研究に加えて、これらの技術を駆使し、社会に応用していく研究にも取り組んでいます。たとえば、その一つがIoTを用いたスマート農業の支援。また、無線ネットワークに接続されたロボットが人間の生活をサポートしたり、近い将来には渋滞緩和や安全性を兼ね備えたネットワーク連携の自律運転自動車が町中を走ることになるかもしれません。新たなビジネスを起こす可能性にも期待が持てます。5Gは早いだけじゃない、容量がデカいだけじゃない。みんなのチカラでもっともっといろいろなものがネットワークにつながっていく。
今、世界中で電気自動車をめぐる動き、議論が活発化しています。2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」では「マイナス2℃目標」が掲げられ、「脱炭素化」の実現が強く求められています。ノルウェーでは2025年、ドイツ、スウェーデン、オランダでは2030年にそれぞれガソリン車、ディーゼル車の販売禁止が決められ、日本でも2035年までに新車販売で電動車100%を実現することを政府が表明しています。脱炭素化に欠かせない自動車の電動化の中でも、バッテリーはそのカギを握る重要な部品です。クルマの航続距離のための軽量化、居住性能のための小型化、さらには蓄電池としての能力を高めることなどもバッテリーに課せられた重要な使命となるはずです。バッテリーが電気自動車の未来を決めると言っても過言ではありません。
薄膜型全固体電池の実用化に向けて、今、実験を繰り返しているところです。通常、電池は厚みがあるのですが、薄膜型全固体電池は基盤の上に薄い膜を乗せてつくります。こうして薄い電池を創るのですが、単に乗せるといっても、圧力や温度などを細かく変えながら最適の条件を探し出します。何十回とトライして失敗し、やっと成功したかもしれないと思えるレベルのものが最近できたばかり。まだまだ予断は許されません。作業は地道で根気が必要ですが、僕がつくった薄膜型全固体電池が、今話題になっている社会の課題、脱炭素化に貢献できると考えると、意欲がわいてきます。
白木先生の研究室では、「液体」を使用しない、全固体電池の研究に取り組んでいます。電気自動車では航続距離や充電時間の短縮が大きなテーマになります。また全固体電池は、液体電池に必要な安全装置も不要になり、電気自動車の性能向上に画期的なメリットをもたらすはずです。電気自動車だけではありません。蓄電池としての活用も期待されています。エネルギーの多くを輸入に頼らざるを得ないわが国では、電池を貯めておくことができれば、わが国のエネルギー事情を大きく改善することにもつながるはずです。
わが国の超高齢社会では、さまざまな科学技術の活用が、高齢者の安心で安全な生活に役立つと考えられています。その一つが「介護ロボット」。介護現場の人手不足解消、働く人の重労働の緩和など、介護ロボットへの期待は高まるばかり。しかし、課題も多くあります。どうしてもロボットは大型で重く、操作も難しくなりがち。たとえば、万一大きく重たいロボットが介護される側の人に倒れ込んだとしたら。考えるだけでもちょっと怖いですね。高齢者、障害者にやさしいロボットは果たして可能なのでしょうか。
僕が取り組んでいるのは、衝突による衝撃を制御する技術。いかに衝撃を吸収し、受け流すことができるか、そのためのシステムづくりです。このシステムを、将来的には介護ロボットに実装したいと考えています。万一、ロボットが人に向けて倒れても、その衝撃を緩和し、人が傷ついたりすることを防ぎます。研究では、卵を使用して、卵が落ちても割れないようにするにはどうするか、という実験を繰り返しています。なんとか、今、卵が割れない程度に、衝撃を緩和できるところまで来ました。このシステムが将来、多くの高齢者の方々のために役立つことを願っています。
浦川先生の研究室では、人間と共存できるロボットの開発をめざしています。たとえば、卵がテーブルから転がって落ちそうになった時。人間なら、そっと受け止めてキャッチすることができるはず。つまり、条件反射ですね。でも現在のロボットは、「やさしく受け止める」ということが極めて苦手。人間のように素早く動いて柔らかくしなやかに卵を受け止めるロボットなら、将来生活や仕事などさまざまな場面で人間と共存することができるだろう。ロボットは大きく怖い存在ではなく、人と同じようにやわらかく優しい存在であるべきだと思うのです。
わが国では水道水が潤沢に使えます。調理や後片付けで約60リットル、1回のお風呂で200リットル……。こんなに毎日水を使っても水が枯渇することは、まずなさそうです。しかし一方で、発展途上国では水不足が深刻な問題になっています。水道の設備がない暮らしをしている人は、世界中で22億人にのぼる、というデータもあります。動物などの排泄物や工場排水が混じった非衛生的で危険な水でも、途上国の人々は飲まなければ生きてはいけないのです。水は無限ではありません。世界中の水事情に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
僕たちの研究テーマは、「下水道」です。竹式傾斜土槽システムという方法で、排水の浄化を可能にします。水道水や電力を使用せず、低コストでしかもメンテナンスも容易です。小澤くんは秋田県の出身で2011年の東日本大震災を経験しています。電気などのインフラがすべてストップし生活が困難になりました。だからこの研究の価値を切実に感じています。また、発展途上国では環境汚染が深刻化していると聞きます。こうした状況に対しても、このシステムなら高度な設備や技術が必要なく、途上国への導入が容易です。建築は、日本人がかつて築き上げた自然を活用する科学だと思います。過去から学んで、未来に活かす建築のポテンシャルをさらに高めるよう研究を続けたいと思います。
樋口先生の研究室では、「環境共生」をテーマに、地球環境の負荷を軽減した住宅の設計や研究に取り組んでいます。緑で日射を遮り、風通しを良くして涼を得れば、エアコンなどはあまり必要がありません。また、し尿を堆肥化して作物を育てることもできます。
今の私たちの暮らしはあまりにも電気や水道、ガスなどに頼り過ぎていると思いませんか。日本人はかつて、自然の恵みを活かして、夏涼しく、冬暖かな木造住宅を得意としてきました。家と住まい方をもう一度見直し、地球にやさしく、省エネルギーで、健康的な暮らしを実現することは十分可能なのです。
たとえばスマホやヘッドホン、ウェアラブル端末やカメラ、そして家電にも、実はセンサが潜んでいます。このセンサ同士を無線通信技術でつなぎネットワーク化することで、世界のあらゆる情報が「見える」ようになります。さらに、スマートデバイスは、今後単に手で持つものから、衣服や時計など、身につけるものへ、さらには身体の中に埋め込むなんてものも登場するかもしれない。私たちはこのようなネットワークの中で必要なモノのショッピング、日ごろの健康管理から、行動への最適なアドバイスも受けられる。さあ、こんな未来にあなたの生活はどうなるのでしょう。
就活のためにメモアプリを活用すれば、きっとより効率的でスマートな就活が可能になるのではないか、それが僕の研究の出発点でした。このアプリには、より多くの人に慣れ親しんでもらうために、キャラクターを登場させたり、ゲーム機能を付加したりして、楽しみながら使ってもらう機能も付加しました。スマホのメモアプリで、みんなの就活スタイルががらりと変わる、そんな夢を見ています。
勝間田先生の研究室では、タブレット、スマートフォンやスマートウォッチのようなウェアラブルデバイスの利用者が増えていることに着目。これらに搭載されているセンサ、実は、利用者の現在の様子を捉えています。動いているのかじっとしているのか、集中しているのか、気持ちが散漫になっているのか。理解しているのか。こうしたことが分かるのなら、AIを利用して、現在の利用者の状態を推定することも可能になります。これを活かせば、オンラインで学習する人の状態にふさわしい教材の提供、オンライン営業での正確な指示の伝達などに役立つかもしれない。つまり、スマートデバイスの無限の可能性を、もっともっと豊かにできるはずだと信じています。
「都市のスポンジ化」というコトバをご存じですか? 都市の中に、空き家や空き地ができて、小さな穴がたくさんあるスポンジのようになっていく現象です。空き家や空き地は、景観や治安の悪化にもつながりますし、街全体の魅力を減少させ、住みたいと思う人も少なくなるでしょう。このためには、空き家や空き地を新たなビジネスや商売などに有効活用したり、賑わいを生みだすイベントスペースに活用したり、あるいは街の名産や名所を活かした観光拠点づくりなども有効な対策になるでしょう。私たち市民と企業、自治体などが一体となった活動が必要です。
僕が所属する研究室では、春日部駅東口周辺の活性化に取り組んでいます。僕は、そのテーマのもと、何かできることはないかと春日部駅周辺を観察していると、「ベンチの利用が少ない」ことに気づきました。ベンチの再配置や増設などを効果的に行うことで、人々が春日部駅東口周辺に立ち寄り、回遊して、賑わいが生みだせるのではないかと考えています。この研究では、どこにどのくらいベンチを置けば回遊が生まれるという明確な答えはありません。試行錯誤を積み重ねて自分なりに答えを探っていくしかありません。しかし、この研究がいつか人口や賑わいが減っている街の参考になればいいなと考えています。
木下先生の研究室では春日部駅から徒歩10分くらいのところにある匠大塚春日部本店さんの駐輪場をお借りして、「フジダナヒロバ」と名付けた休憩所とする取り組みを行っています。春日部市の行政、日本工業大学、そして地域の人々が一体となって活動しています。学生たちが手作りしたベンチを置いたり、屋台を設置したり、イベントを開催したり。また、憩いの場を増やすだけではなく、この地域で空き家や空き地を使って新たなビジネスや商店を始めたいという方のサポートも行うことで、人口減少や空き家・空き地の増加に悩む地域の人々の手助けになればと考えています。このために、人の行動調査・分析などを通じてまちづくりに貢献する活動も行っています。
私たちが日々摂取している必須ミネラルのうちカルシウムに次いで多いのは「リン」だ。リンは農業分野で肥料の重要な要素でもありさらに、工業分野でも半導体や燃料電池など、その活用の幅は広い。
リンは地球規模では、魚や鳥を経由したり地殻変動などによって何億年かの単位で循環すると言われるけれど現在の世界中の利用ペースではとても間に合わない。天然の資源の量には当然限りがある。
基幹工学部 応用化学科
資源創回生プロセシング研究室
内田 祐一 教授
私の注目するのが”リンを含む産業副産物“だ。
例えば、鉄の製造時に発生する鉄鋼スラグや下水処理時に発生する下水汚泥の中には多量のリンが眠っている。
私は、これまで利用の難しかった「もったいない」リン源から、どれだけ上手にリンを回収できるかを研究している。
不要なものでも、別の世界では必要とされるものがある。
見過ごされているものから、別の場所で輝ける存在へ。
持続可能な社会へ向けて、もっと資源を再利用していく方法をこれからも追い求めたい。
人間はリンを食物から摂取します。近年の地球規模の人口増加に伴い、多くの食物が必要になっていますが、食糧となる植物を育てるのにも、肥料成分としてリンが不可欠です。
資源としてのリンの特徴は、産業だけでなく、生物の命を繋ぐためにも必要であることです。
産業部門の副生物や排熱などの「もったいない」未利用資源を、高度に有効利用するための研究を手掛けています。持続可能な社会に貢献できる環境調和型技術を、共に考えていきたいと思います。
ここ1年ほどの間で、大きく変わってしまったもの。
「仕事や勉強のスタイル」も、その一つなのではないだろうか。
職場や学校から離れてリモートで行う姿は、徐々に当たり前になりつつある。
しかし、周りに人がいない状況では、集中できないという人も少なくない。
環境によっては、聞こえづらかったり、動画が見にくかったりもする。
助けを呼びたくても、呼べない環境で作業をしている時だってある。
そんなとき、もしも自分の状況をつぶさに理解してくれる相棒がいれば……。
先進工学部 情報メディア工学科
ネットワーク情報システム研究室
勝間田 仁 教授
近頃は多くの人がタブレットやスマートフォンを用いるようになった。また、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスを使う人も増えている。
これらに搭載されたセンサが捉えるデータが表すものは、利用者の今の様子だ。
動いているのか、じっとしているのか、集中しているのかどうか、理解しているのかどうか。
刻々と変わるデータを活かして、それぞれに最適な作業環境を支援できないかと考えている。
私たちが常に発している情報を集めると、それは大きな価値となる。どんな価値の組み合わせが、これから来る新たな日常を支えてくれるのだろう。
スマートフォンやタブレットの普及に伴い、オンライン学習の機会が日常的に得られるようになってきました。オンライン学習の際、スマートフォンやタブレットは学習端末として使用していますが、スマートウォッチやメガネ型デバイスを活用することで学習者のおかれている学習環境を把握できることが期待できます。本研究では、スマートフォンやタブレットに加え、スマートウォッチやメガネ型デバイスなどウェアラブルなデバイスをスマートデバイスとし、複数のスマートデバイスを組合わせて個人の学習状況を把握し、個人に適した学習教材や学習支援を提供する近未来型の学習環境を実現することを目指しています。
私たちはご飯を食べて栄養を手にしているけど、植物はどうだろう。
動物とは、全然違う方法で栄養をゲットしているよね。
太陽の光で「光合成」して、栄養を体の中で作り出している。
植物は動きまわれないので、周りの環境に合わせてうまく生きている。
光が多く射す方を見つけたら、そちらにグイグイと茎を伸ばしていく。
実は、植物に”目”はないけど、光の向きは分かるんだ。
でも、どうやって光の方に伸びるんだろう?
基幹工学部 応用化学科 植物生産工学研究室
芳賀健 准教授
植物が生きる上では、いろいろな"ホルモン"が大事な役割を果たす。
体内のホルモンの量を調節することで、周りの環境に敏感に反応しているんだ。
もちろん、光に向かって伸びる性質に関わるホルモンもあるよ。
でも、光に向かうメカニズムには、まだわからない点がたくさん残されたままだ。
私は、通常の株と突然変異で光に反応しない株を用意して、遺伝子の働きを比べている。
よく観察することで、今まで分からなかったことが見えたりするんだ。
それが、未知の仕組みにたどり着くきっかけになったりする。
植物は光がないと生きていけない。
だからこそ備えている、「効率的に光を使いこなす」方法を解明したいんだ。
解明できれば、人間も光のエネルギーをもっと有効に使えるようになるかもしれないね。
植物の茎は、光に向かって伸びる性質があります(【写真】参照)。光合成に必要な太陽の光エネルギーを効率的に獲得するために、このような反応(光屈性と呼びます)を植物は利用しています。光屈性については古くから研究され、青い光によって誘導されること【動画1】、植物ホルモンの1つであるオーキシンが重要な働きをしていることなどが明らかにされています。
現在、どの遺伝子がどのように働いているかを、シロイヌナズナなどのモデル植物を用いて調べられていますが、まだまだ分からないことがたくさんあります。遺伝子の働きを調べる上で有効なのが、突然変異体の利用になります。突然変異体とは、遺伝子に異常を示す個体です。例えば、ある光屈性の突然変異体では、全く光に反応しません【動画2】。私の研究室では、このような突然変異体の性質を詳しく調べることで、光屈性に関係する遺伝子の働きを明らかにしようとしています。
今、君はどんな音を聞いている?
心地よい音楽、人の話し声、はたまた電車のモーター音だろうか。
私たちの周りには、様々な音が生まれては、消えている。
音は、ものの震えが空気中を波として伝わってくるものだ。
心地いい音の波もあれば、耳障りな音の波もある。
目には見えないが、 音が聞こえるということはそこに波があるということだ。
では、この電車内をもっと静かな空間にしたかったらどうすればよい?
基幹工学部 電気電子通信工学科
木許 雅則 准教授
もちろん誰も話さなくても、何もしなくても、音が消えることはないはず。
そこで登場するのが、もう―つの「音」だ。
波は、反対の形のもの同士がぶつかると打ち消されてしまう。
この原理を応用し、消したい音に、正反対の音の波をぶつけることで音を消す技術「アクティブノイズコントロール(ANC)」を、私は研究している。
これまでの研究では、人やモノの移動などの環境変化に弱かったり、音が消える範囲が限られていたり、それ以外の場所は逆にうるさくなってしまっていたりと、使える場面が限られている。
私の研究室では、 複数の超指向性スピーカを使ったシステムで、これらの解決に取り組んでいる。
今は高級ヘッドホンレベルでしか味わえない「ノイズのない世界」を
生活する空間全体で味わえるようになるかもしれない。
そんな未来の日常で、私たちはどんな音を聞きたいと思うのだろう。
現状のANCでは、スピーカから消音ポイント間の伝搬経路に変動(人やモノ、消音ポイントの移動)があると消音性能が劣化したり、消音ポイント以外の騒音が制御されていない地点では逆に音が大きくなってしまうなどの問題があります。そのため、その利用はダクトや自動車の室内、工場など、特定の環境や様々な制約条件下に限定されてしまい、公共施設やオフィス、一般家屋など皆さんの目に届く一般的な場所への適用には至っていません。
当研究室では、指向性の極めて高いパラメトリックスピーカを応用したマルチチャネルANCシステムを構築することで、上記の問題の解決に取り組んでいます。このシステムにより、使用場所や場面の制約から開放された一般的で身近な環境で利用できるシステムの実現を目指しています。