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NO.28 よくよく見れば、貴重な資源! 隠れている お宝のリンを回収だ

NITトレインラボ 2021.09.01

基幹工学部 応用化学科 資源創回生プロセシング研究室 内田 祐一 教授

■リン(P)

リンは人体中に核酸の成分として細胞に含まれ、また歯や骨の成分でもあり、体重の1%ほどを占める必須元素です。人間はリンを食物から摂取します。近年の地球規模の人口増加に伴い、多くの食物が必要になっていますが、食糧となる植物を育てるのにも、肥料成分としてリンが不可欠です。さらに、金属製品の表面処理、燃料電池、半導体製造などの工業用途にも利用されます。 資源としてのリンの特徴は、産業だけでなく、生物の命を繋ぐためにも必要であることです。

■資源問題(リン)

肥料や工業材料に使われるリンは、リン鉱石を原料として工業的に得られます。リン鉱石は、専門的には、マグマの活動によってできる無機質リン鉱石と、動植物や微生物の遺骸が陸地や海底で堆積し、地殻の変動・隆起により陸化した有機質リン鉱石に大別されます。日本でもかつては有機質リン鉱石を産出しましたが、現在はリン鉱石やリンそのものを全て輸入に頼っています。 世界的にも、リン鉱石を産出する地域は限られており、国内で安定して産出するリン資源が求められています。

■産業副産物;鉄鋼スラグ

多量の原料や材料を扱うプロセスでは、その規模に応じて副産物が発生します。多くの産業で、副産物は適切に再利用されています。 例えば鉄鋼材料の製造はとても規模の大きいプロセスで行われ、大きな製鉄所では1日で1万トン以上もの鉄を生産します。
自動車で例えれば1日あたり1万台分以上ともいえます。1トンの鉄を作ると、原料の鉄鉱石由来の副産物としてスラグが約0.3トン発生します(図1)。つまり、鉄を作るとその1/3の量のスラグが出るわけですが、これらは建設や土木材料に活用されています。 この鉄鋼スラグにはリンを含むものがありますが、発生量が多く有望なものの、リン濃度が低いために、リンの回収は困難な課題とされてきました。

■産業副産物;下水スラッジ

下水処理の過程で発生する堆積物の下水スラッジには、生活由来のリン成分が含まれており、安定した量が集約されます(図2)。下水スラッジは鉄鋼スラグより多くのリン成分を含んでいます。下水処理プロセスからのリンの回収はこれまでにも試みられていますが、リンの潜在的な含有量に対して、充分に回収されているとはいえません。

■鉄鋼スラグと下水スラッジの混合物からのリン回収

鉄鋼スラグと下水スラッジは主要成分が似通っています。これを利用し、両者を混合して1000℃超の高温に加熱することで、リンの濃化した部分とそうでない部分に分離できることを見出しました(図3、動画1)。双方の発生量が多いことから、大量処理に適した高温プロセスでの同時リン回収を目指しています。

■おわりに

産業部門の副生物や排熱などの「もったいない」未利用資源を、高度に有効利用するための研究を手掛けています。持続可能な社会に貢献できる環境調和型技術を、共に考えていきたいと思います。

▶ 応用化学科の紹介 ▶ 内田祐一教授の紹介


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