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NO.37 「もしもの時」に、あなたはどう動く!? 津波発生時の危険予知トレーニングシステムの開発

NITトレインラボ 2022.06.21

先進工学部 データサイエンス学科
人間‐機械協調系研究室
荒川 俊也 教授

2011年3月11日の東日本大震災が発生してから10年以上が経過しています。我々は、東日本大震災の教訓を活かし、来るべき南海トラフ巨大地震に備える必要があります。東日本大震災では、津波災害の被害に遭われた方が多いことから、津波に対する危機意識を高める必要があります。

近年は情報技術の発達により、スマートフォンのGPS機能を活用したり、地形の情報を活用した防災教育の事例が増えています。しかし、現在の防災教育は、徒歩避難のみを想定したものが殆どです。しかし、実際には、自動車避難をするか、徒歩避難をするかは、自分が置かれている環境や立地から、避難者が自主的・総合的に判断することとなります。適切に判断を下すためには、徒歩避難と自動車避難それぞれの特性を十分に把握することが必要です。

私の研究は、「徒歩避難と自動車避難それぞれの特性を把握するシステムを開発し、システムを活用することにより津波避難に対する危機意識を高められる教材の開発、そして、開発した教材の運用」がテーマとなります。

 津波避難訓練用シミュレータシステムの開発

私の研究では、津波避難訓練用シミュレータシステムを開発しています(三咲デザイン合同会社との共同開発)。このシステムは、「自動車避難と徒歩避難の両方を体験できる」「避難する車両による交通渋滞を再現している」「避難時の緊張感や切迫感を体験者に与えることができる」ことを特徴としています。自動車避難の場合は、デスクトップパソコンに接続されたステアリングコントローラーを操作して運転します。

一方で、徒歩避難の場合は、VR(バーチャルリアリティ)を活用したシステムであり、ヘッドマウントディスプレイを装着して、手元のコントローラーを動かして操作します。交通環境を再現できる交通流シミュレーション・プログラムも用いられており、避難する車両により生じる渋滞も再現されています。



宮城県石巻市と愛知県西尾市における実験

2021年に、このシミュレータを、東日本大震災で津波避難を経験した宮城県石巻市民と、今後南海トラフ巨大地震で大きな被害を受けるとされている愛知県西尾市民に体験して頂き、シミュレータの評価をして頂きました。

その結果、このシミュレータは、緊張感や切迫感を体験車に与えることができること、また、シミュレータを経験することで、原則徒歩避難としつつも、自動車避難のあり方を検討するきっかけを与えるツールとしての活用が期待できることがわかりました。しかし、実際の車での運転や歩行感覚との違いなど、実際の環境と遜色ないようにするために、シミュレータシステムの改善の必要性についても判明しました。


[写真] 津波避難訓練用シミュレータシステム。左は自動車避難を体験している様子、右は徒歩避難を体験している様子です。ともに1台のデスクトップパソコンで動作しています。自動車避難はレーシングゲーム用ステアリングコントローラーで操作し、徒歩避難はVRシステムのコントローラーで操作します。


[写真] 津波避難訓練用シミュレータシステムの画面。左は自動車避難の様子、右は徒歩避難の様子です。


[写真] 宮城県石巻市での実験の様子。NHK仙台放送局「てれまさむね」の取材も受けました。

津波避難に対する危機意識を高められる教材の開発

KYT(危険予知トレーニング)という訓練があります。これは、工事や製造などの作業に従事する作業者が、事故や災害を未然に防ぐことを目的に、作業に潜む危険を予想し、指摘し合う訓練です。私の研究では、宮城県石巻市の実験の結果を活用して、津波避難に特化したKYTをアプリ化すると共に、愛知県西尾市と連携し、実証実験を行うことを目指しています。2022年に実証実験を行い、KYTアプリの有効性を検証していきます。

これから

私の研究は愛知県西尾市をモデルケースとして進めていますが、本研究の話は、愛知県西尾市にこだわる話ではありません。私の研究で提案する手法の効果が示されれば、愛知県西尾市以外にも、南海トラフ巨大地震で被害を受ける他の自治体や、地震による津波避難だけでなく、豪雨などの激甚災害にも展開・適用できると考えています。また、この他、KYTアプリだけでなく、ゲームを用いて津波避難危機意識を向上することができないか、ということも考えており、ゲーム開発も進めています。これらの展開・適用を見据えて、研究を進めて参ります。
この研究は、科研費基盤研究(B)(19H01723)、科学技術融合振興財団調査研究助成、大林財団研究助成事業による研究助成の支援を受けて遂行されています。


[写真] KYTアプリ(プロトタイプ)。提示された状況に対して、避難時に注意すべきポイントをタップして回答します。手軽に・容易に訓練できるように工夫されています。


▶ データサイエンス学科の紹介  ▶ 荒川 俊也 教授

TRAIN LABO NO.37 PDF
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