永久磁石による磁気浮上技術の研究で応用物理学会の講演奨励賞を受賞
環境共生システム学専攻博士前期課程2年(池添研究室/受賞当時)の鈴木智明さんが、第71回 応用物理学会 春季学術講演会での口頭発表に対して、第56回(2024年春季)応用物理学会講演奨励賞を受賞した。受賞論文題目は「永久磁石によって磁気浮上した水溶液中の溶質の単結晶成長」。表彰式は本年9月17日に行われる。
鈴木さんは、同研究室で開発された「水を永久磁石で浮上させる技術」を応用し、固体物質を溶かした水溶液を浮上させ、水分だけを蒸発させることによって浮上させたままの状態で結晶を析出させることに成功。さらに、条件を制御することで、1つの水滴から1つの単結晶を成長させることができることも見出した。一般には単結晶を作ること自体が難しく、仮に結晶が得られても多くの単結晶から多数の小さな結晶ができるが、この技術を使うと1つの種結晶から大きな単結晶を得られるという点が評価された。
物体を浮上させる技術が様々研究されている中、永久磁石による磁気浮上技術は、宇宙の微小重力を利用した物体浮上技術に比べ、場所・時間・費用などの観点から大きなメリットがある。宇宙ステーションでの重要な実験の一つにタンパク質の結晶育成があるが、今回の研究成果は、宇宙実験に似た実験が地上でも手軽にできることを示唆している。ほかにも、液体の表面張力の測定や過冷却実験などへの応用も可能で、新しいタイプの分析機器の開発や実験に利用されることが期待されている。
今回の受賞に際し鈴木さんは、同研究室では実験が想定通りに進まない場合、その原因を考えるだけではなく「どうすればうまくいくのか』を考えることを特に重要視して指導されていると説明したうえで「装置や実験方法などを改善し、実験データを積み重ねていった結果が今回の受賞につながり、大変うれしい。後輩の皆さんも、頻繁に先生に相談し、楽しみながら研究を続ければ、きっと素晴らしい研究成果が得られるだろう。今後も、学会や大学で培った経験を生かして、一人前の社会人になれるように努力していきたい」と抱負を述べている。
【参考】
◆公益社団法人応用物理学会
https://www.jsap.or.jp/
◆第56回(2024年春季)応用物理学会講演奨励賞 受賞者一覧
https://www.jsap.or.jp/young-scientist-presentation-award/recipients56
◆研究室紹介(先駆物質化学研究室・池添泰弘教授)
https://www.nit.ac.jp/department/chemistry/lab/lab1/pioneer