NO.4 子供の頃に夢見た変形ロボット。 その夢を形にした「極限作業用4足歩行ロボット」の研究・開発!
先進工学部 ロボティクス学科 ロボット機構設計研究室 樋口勝 教授
お掃除ロボットを筆頭に、今やロボットは私たちの身近な存在になりました。本学の人型ロボットの「ニコット」もテレビドラマの中で主人公の家に当たり前のように住んでいました。しかし、歩行ロボットは、災害現場や原発内のような極限作業での活躍が期待されているにもかかわらず、おもちゃ以外では実用化はされていません。その大きな理由の一つに、車輪と比べてエネルギー効率が悪いことがあります。これは、歩行ロボットが仕事を何もしていなくても本体を支持するために多くのエネルギーを必要とすることが原因です。
この問題を解決する方法として、本体を支持するためのモータと、移動するためのモータを完全に分離する方法があります。しかし、これを軽量で単純な構造である回転関節だけで実現しようとすると、水平方向には広い範囲で動くことはできても、階段や坂道に対応するために必要な鉛直方向には余り動くことができないロボットになってしまいます。これでは、歩行ロボットの長所である、段差や階段や不整地のような車輪では移動が困難な場所で安定した移動ができる悪路走破性が損なわれてしまいます。そのため、多くの歩行ロボットではこの方法は用いられていません。
ここに、合体・変形ロボットを人まねではなく自分のオリジナルのデザインでつくるという子供のころからの夢からヒントを得て、エネルギー効率は良いが悪路走破性はそれほど高くない形態と、悪路走破性が高いがエネルギー効率はそれほど良くない形態の2つの形態をとる変形ロボットにすることで、この問題を解決することを考えました。そして、極限作業用を具体的な適用対象とし、ロボットの設計から製作まで全て日本工業大学で行う“Made in NIT”にこだわり、この変形歩行ロボットを開発しました。
ロボティクス学科の研究室の多くは、3Dプリンタ、CNCフライス盤、レーザ加工機等のコンピュータによる自動制御で部品を製作することができる機械があり、それらを駆使してこのロボットは製作されています。そのため、ここでは紹介できませんが、変形以外にもこのロボットには独自の機構や機能、そして遊び心のあるデザインが沢山ちりばめられています。
価値があるものを開発する過程で、自分の夢をかなえ、さらに、自分なりのこだわりや遊び心をいれ込むことができることは、自分で設計から製作まで行うからこそ味わうことができる特別な喜びではないでしょうか。
なお、本研究はJSPS科研費JP24560162の助成を受けたものです。