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NO.20 未来を照らす新素材「カーボンナノチューブ」 を 安く、手軽に、均一に作り出す!

NITトレインラボ 2021.01.15

基幹工学部 電気電子通信工学科 先端材料/電子物性研究室 石川 豊 教授

 カーボンナノチューブは、炭素だけでできた、ナノメートルサイズの直径(髪の毛の約一万分の一)を持った筒状の材料です。21世紀の産業の基盤を成す材料と言われていて、大変有望視されています。

 写真1と写真2は、シリコン(半導体)の板の上に、カーボンナノチューブを成長させ、板の横方向から電子顕微鏡で撮影したものです。写真1は、低密度の成長で、これを上から(表面側から)見ると、パスタをお皿に盛ったように見えます。しかし、これでは応用が利きません。それに対して、写真2は、高密度のため互いに支え合い、下地の板から垂直方向へブラシの毛のように成長しています。これは、未来の電子デバイスを中心に応用の可能性を感じさせるものです。写真2は、450℃での成長ですが、さらに低温化できれば、応用は広がります。例えば、ガラスやプラスチックなど耐熱性の低い材料が壊れない温度で成長できれば、どうなるでしょう。写真3-1は、写真2の試料の表面に水滴を垂らし、真横から撮影したものです。写真3-2のカーボンナノチューブのないシリコン板上に直接垂らしたものに対して、強力に水を弾いていることがわかります。水に濡れては困る物の性質を大きく変える効果もあるのです。今は、低温で高密度に性質の揃ったカーボンナノチューブを成長させ、LSIなどの電子デバイスへの応用を目論んでいます。

 では、どうやって成長させるか。既存の装置なら成長は簡単ですが、あえて自分たちで装置を組み立てて、手作り感のある装置で成長させています。いくらでも工夫ができる、つまり、アイデアを生かせるわけです。これによって、低温高密度成長を実現します。原料にはアルコールを使います。カーボンナノチューブの純度を高くできることと、実験の安全性を高めるためです。また、安く生成できる利点もあります。

 ところで、私の趣味は山登りです。研究は山登りに似ています。山頂は見えていても、ルートは自分で探します。試行錯誤の果てに道に迷い、なかなか山頂にたどり着けませんが、苦労する中でルートファインディングが上達し、いつしか山頂に辿り着いた時の達成感は、何物にも代えがたいものです。皆さんも、大学で学び、是非本物の研究を体験して、一回りもふた回りも、大きく成長してください。
 ▶ 電気電子通信工学科の紹介 ▶ 石川豊教授の紹介

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