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NO.19 超高感度のバイオセンサは「ラムネ瓶に入ったビー玉」が可能にする!

NITトレインラボ 2020.12.01

基幹工学部 機械工学科 微細デバイス研究室 加藤史仁 准教授

水晶振動子バイオセンサ

 例えば、夜に鳴り響く除夜の鐘に虫が止まったとしましょう。もちろん鐘の音色は変化しません。しかし、鐘の大きさが虫よりも小さかったらどうでしょう。皆さんもお分かりの通り、鐘の音色は変化し、場合によっては、直ちに鐘の音が止まってしまうかもしれません。こうした鐘の音色の変化(振動の変化)に着目した素子が水晶振動子バイオセンサです。水晶を薄く・小さくして、表面に抗体(身体の中に入ってきた悪い成分と反応するもの)を固定化しておきます。水晶は、一定の周期で振動する特性を持っているので、鐘と同様に振動させておき、抗原(細菌やウイルスなどの悪い成分)が水晶表面にやってくると、抗体が抗原を捕まえます。すると、水晶は重くなり、振動が変化します。この変化から、親和性(抗原と抗体の相性)を定量化できます。身体への負担の少ない抗体薬剤の創薬には、こうした親和性の定量化が重要となってきます。

ラムネ構造のバイオセンサ

 お祭りで見かけるラムネの瓶には、ビー玉が入っています。ラムネを飲む時、上手に飲まなければ、ビー玉が移動して飲むことができない・・・そんな苦労をしたことはありませんか?この面倒な体験がきっかけで、誕生したセンサが、『ラムネ型バイオセンサ』です。このセンサは、指先に乗る程度のガラスチップの内部に、薄く・小さくした水晶を閉じ込めた構造をしています。そして、水晶は、チップ内部で、自由に動き回れる。それは、まるでラムネ瓶の中のビー玉のように。一般的な水晶振動子バイオセンサは、水晶がジグで機械的に固定されており、更なる高感度化のために、水晶をより薄く・小さくすると、取り付ける際、破損してしまいます。一方、ラムネ型バイオセンサは、機械的固定部が無いため、水晶をより薄く・小さくすることができます。その結果、既存の水晶振動子バイオセンサを遥かに上まわる高感度化が実現できています。

高感度センサを研究するための特別な空間 『クリーンルーム』

 ラムネ型バイオセンサの研究には、特別な空間が必要です。それは、『塵埃がほとんど無いクリーンな空間』です。この空間は、『クリーンルーム』と呼ばれています。どれほどクリーンかというと、1立法フィート(約30×30×30 cm3)中におけるサイズ0.5μm(1μmは、1mmの1000分の1の大きさ)の塵埃が、1000個以内です。例えば、我々の日常の空間には、1,000,000個以上の塵埃が飛び交っています。このような、塵埃の多い空間では、微細かつ精密な構造のラムネ型バイオセンサを製作することができません。そのため、高性能クリーンルームを設置し、ラムネ型バイオセンサの研究に加えて、米粒よりも小さい高性能かつ高機能なセンサやアクチュエータに関する研究を推進するための環境を整えています。

何もない“ゼロ”の状態から、発想して“モノ”を創り出そう!

 誰も思いつかない独自のアイデアを具現化し、それを人々に提供することで喜んで頂く。そんな素晴らしい体験ができる学問が工学です。日本工業大学における学びや研究を通じて、工学の素晴らしさを一緒に堪能してみませんか!

▶機械工学科の紹介 ▶加藤史仁准教授の紹介



TRAIN LABO NO.19 PDF
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